アサヨ峰~鳳凰三山
漆黒の空に輝く満天の星々は、夜明けの到来とともに一斉にその姿を消した。バスの車窓には眩いばかりの紅葉の世界が広がる。その華やかな色彩も徐々に落ち着いたトーンへと変わっていく。
北沢峠、快晴。樹林帯を抜けると左前方に甲斐駒ヶ岳の雄姿が堂々たる姿を現す。花崗岩の山肌が白く輝く。仙水峠で進路を右尾根へと転ずると早川尾根の登りとなる。
しばらくは甲斐駒ヶ岳を背に、そのパワーを身体に感じつつ急登を進む。
これ以上ないと思われる最高の天気。標高を稼ぐにつれて八ヶ岳、乗鞍岳そして北アルプスの山々も姿を見せだした。
もちろん仙丈ケ岳、北岳も尾根の登り始めから私たちの右側にずっと寄り添うようにそびえている。栗沢山を過ぎるといよいよ今回のメインの山、アサヨ峰へのルートが一望。
いくつかの岩場を過ぎると、富士山のその端正な姿も視界に入る。爽快な気分でアサヨ峰山頂へ。日本第2の高峰北岳と一緒にカメラに収まる。360度の展望、これから進む縦走路がずっと先まで確かめられる。下り基調の稜線を本日の幕営地早川尾根小屋へと進む。本年の営業をすでに終えた小屋には、避難小屋に3パーティほど。テント場は私たちだけ。まじめな話題を子守歌に意識は早、別世界へ。寝静まるころよりかなりの強風。樹々を唸らす怒涛のような風の咆哮は朝まで続いた。
4日朝、昨日までとは打って変わって厳しい寒さ。北岳山頂は厚い雲に覆われている。風花がこちらの稜線まで舞い降りてくる。強風と寒さで身体が冷える。午前中いっぱいひたすら我慢の縦走だ。
北岳側に面する稜線の樹々は、霧氷と風花をまとった幻想的な光景を描いている。ガスにすっぽりと包まれながらも不思議と、太陽の光が暗雲を引き裂くように、これから進む前方を次々と明るく照らしてくれる。地蔵ヶ岳のオベリスクまではあとわずか。
地蔵ヶ岳ではオベリスクに挑戦、岩壁を攀じる、周辺を散策するなど皆、思い思いに楽しい時間を満喫。先ほどまでのうっ憤解消です。
その後順調に観音ヶ岳、薬師ヶ岳へと登り、鳳凰三山無事制覇です。
本日は南御室小屋にて幕営。ハッピーバースデーのメンバーに乾杯!
氷点下5度まで冷え込む。テント場周辺ははうっすらと雪化粧、11月初旬といえど冬の到来を感じます。
5日最終日、未明の闇の中を出発。静かに曙光が広がり、夜明けの太陽の光は登山道にも差し込んできました。輝きを増す光を浴び、自分自身の中からも、赫々たる新たなエネルギーが湧いてきます。
清々しさいっぱいの朝の空気を吸い込んで、後は夜叉神峠まで下るのみ。白峰三山が美しい姿を披露しながら見送ってくれました。
晩秋から初冬へと行きかう季節の旅人登山、まもなくフィナーレです。