下ノ廊下

台風19号の接近で、満席だったはずの夜行高速バスはほぼ貸し切り状態。4時前に到着した扇沢は未明の星が瞬いて、翌日に台風が来るとは信じられないほど静穏です。始発を待って、7時半出発!

黒部ダムで下車して構内を先に進むと、下ノ廊下登山者用の出口が。トイレ・水場あり。「旧日電歩道」と書かれた矢印に従い、ブナ林から高度約100mを下り川底へ。ダムの放水を見上げながら左岸へ渡ります。振り返ると立山の紅葉が見頃を迎えていました。渓流沿いにも少しずつ紅葉が。別山谷出合までは、落石を気にしながらの岩場歩きも。丸太梯子での高巻き。これは下りの途中で撮ってもらったもので、けっこう高度感あります。岸壁をくり貫いた登山道。元は電源開発のための偵察路として1920年代に作られた道で、当時は岸壁からワイヤーを下ろして木を沿わせただけの吊り桟道だったそうです。少しずつ沢からの高度が出て、道幅も狭くなっていきます。片手でワイヤーを握りしめ、おっかなびっくり片足を上げてカシャッ。リーダーの足も参加(笑)白竜峡。非日常の世界を進みます。十字峡にかかる吊り橋。吊り橋の途中から。西から剣沢、東から棒小屋沢が黒部川本流に合流しています。青く澄んだ渓流にナナカマドの赤い実が印象的。S字峡。 この深い谷を作りだした川の水勢。昨日事故が起きた東谷。振り返れないので、前を向いたままピース。仙人谷ダムの敷地内に入っていきます。美しい産業遺産です。ダムの堰堤上を横切って対岸へ。施設内を通過。おじゃましまーす。戦前の国策に苛烈を極めた掘削工事。ダイナマイトの自然発火事故を起こすほどの高温下(坑内岩盤温度160℃)を人力で掘り進んだそうです。歩かせていただいた通路も熱気がこもっていました。現役のトロッコ軌道を横断します。外界へ。17時、阿曽原温泉に到着。手続き時に登山道整備のお礼を伝えると、「登山道は安全のために整備しているんだから、こんな日に山に来てはいけない」と真っ当なお叱りをいただきました。この3日間、死亡事故が続いているそうです。テントは我々も含め3張のみ、小屋泊者の靴もごく僅かでした。

露天風呂を独り占めして満喫。翌朝4時半、少雨。しばらくは山中の道なのでヘッデンを点けて早出します。本降りになる前に欅平に降りる計画です。

夜が明けて、沢からの高度差200mの断崖絶壁を進みます。3連休初日ですが、午後からの台風襲来で欅平から登ってくる人は皆無。昨日に続き、すれ違いに神経を使わず歩くことができました。大太鼓周辺。折尾谷・志合谷は深い谷に渡された砂防トンネルの中を進みます。靴上までの水量はまだ無く、ラッキーでした。蜆谷周辺の岸壁からのシャワーもさほどではなく、無事通過。視界が展けてきました。断崖絶壁の桟道ももうすぐ終了です。

10時前、欅平に無事到着。駅に『高熱隧道』の生原稿が!!台風の襲来前に褒められた策ではなかったけれど、結果的にすれ違いや渡渉のリスクなく、安心して歩くことができました。台風が運ぶ南風の影響で日中の気温は17℃ほど、2日目は雨で合羽の中まで濡れたけど、体を冷やさず歩けたことも大きかったです。ちょうど天気と行動計画のピースをピッタリ合わせることができました。運を使い果たしていないか心配(>_<)

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