大雪~トムラウシ~十勝岳連峰~原始ヶ原

 

着陸間近の機内から、十勝岳連峰とその奥に遠く霞むトムラウシ山が見える。これで行程の約半分。その北に広がる大雪山系は、この窓からは見渡せない。全行程73㎞。台風9~11号の襲来予報とともに、出発の日がやってきた。

■8/7 羽田~旭岳温泉

預け荷物20㎏、機内持ち込み手荷物10㎏の重量制限を無事クリア。旭川駅近くのホテルに下山後の荷物を預け、最終装備を買い足して前泊地の旭岳温泉へ。ビジターセンターのジオラマで今回の縦走行程を俯瞰すると、その7割がグレード5、残り3割はグレード4に分類されている。市街地と違い、山中でのヒグマ被害は最新情報でも皆無だった。

■8/8 姿見~白雲岳キャンプ指定地

6時の始発ロープウェイで出発。ゴーッと鳴り響く噴煙を間近に聞きながら、火山礫の路を一歩一歩進む。途中からガスに包まれ、登頂時に一瞬の晴れ間が。

裏旭の雪渓はガスで視界が効かず、GPSを確認して一気に下る。大雨の予報が外れ、北海岳から白雲岳までは裏大雪の天空の庭を満喫。今日のうちにと、翌日歩く高根ヶ原の展望を目に焼き付けた。

■8/9 白雲~ヒサゴ沼避難小屋

台風の襲来を前に撤退組が大多数の様子。日程・食料・ガスとも余裕を持たせてあるため、水が豊富で避難小屋もあるヒサゴ沼まで進み、停滞して台風をやり過ごすことに。濃霧のなか朝イチで出発。ブッシュの朝露と霧であっという間に髪から靴の中まで濡れ、体温を奪われる。高原沼や忠別沼で一瞬ガスの切れ間があり、励まされた。

背丈を超えるハイマツ帯が延々と続く五色岳を抜けると、化雲岳までは広大な花畑。稜線からヒサゴ沼まで標高差250mの下りは、崩れた木の階段を伝いながら小川の中を行く状態だった。本降りが来ないうちに雪渓下で2日分の水を確保し、籠城に備える。

■8/10 停滞

小屋に守られ、濡れ物を干しながら終日停滞。標高1600mながら日中の気温は7℃。ぐしょぐしょの靴の乾燥に、セームタオルと防災用品の圧縮おしぼりが大活躍した。

■8/11 ヒサゴ沼~トムラウシ南沼指定地

熊・雷の対策と天気予報の確認にラジオを持参したがヒサゴ沼では受信できず、気圧式の腕時計が活躍。7時半、空が明るくなるのを待ち出発。雪渓を直登し、トムラウシ山へと続く稜線へ。一昨日歩いている間ほとんど見えなかった大雪の大展望。山頂から存分に見納めて南沼指定地に下ると、今度は十勝岳連峰の大展望が。テントにシュラフを干し、フライをシート代わりに濡れ物を広げ、花畑を散歩して一息。

■8/12 南沼~双子池キャンプ指定地

三川台までの緩やかな下りは、草原のような笹の海。その後はもうすっかり慣れた背の高いハイマツ帯が続く。ルート中最も歩く人の少ないヒグマの生息地帯だが踏み跡は明瞭、外国人2組を含む4組とすれ違った。コスマヌプリの下りでガスが晴れると、翌朝登る三百名山・オプタテシケ山が真正面に聳えていた。

トムラウシ・十勝の縦走者しか通らない双子池は、数張分だけの素朴で静かな指定地。夜目を覚ますと、この世に存在するものが星だけに見えるほどの圧倒的な闇と星空だった。水はこの時期がギリギリ。雪渓下でコッヘルに汲みながら取水。

■8/13 双子池~上ホロキャンプ指定地

この先は水場が涸れているため、2日分の水を背負い出発。トムラウシ山頂と雲海の間から昇る日の出に目を奪われる。山肌一面の花畑、駆け回るナキウサギを眺め、崩壊地とキレットを越えてオプタテシケ山頂へ。この北東側ルートは、下りで抜けたガレ場続きの西側ルートと天地の差。トムラウシから縦走した甲斐があった。

美瑛富士を巻き、美瑛岳から十勝岳を越えるまでは火山灰・火山礫の路。十勝岳までの登り返しが長い。山頂から上ホロ指定地への下りでガスが晴れ、翌日進む富良野岳方面の展望が。

■8/14 原始ヶ原へ下山

出発時の気温4℃、濃霧。上ホロカメットク山の登りで一気にガスが切れ、昨日越えてきた十勝岳が徐々にその雄姿を現す。奇跡のような瞬間。

行程最後のピークは花の百名山・富良野岳。山頂からは十勝岳連峰全山、その遥か彼方に出発地点の大雪山最高峰・旭岳が。この7日間の軌跡。最後に与えられた眺望と、ここまで辿り着かせてもらえたことに感謝!!

原始ヶ原・滝ルート経由の下山は長く、所要6時間。長い急傾斜のガレ場を過ぎ、湿地帯へ。丸木橋の流失で公的には立入禁止のため湿地帯の踏み跡は皆無だが、1週間前の補修時のものか真新しいテープが付けられていた。登山道は整備されているが錦糸の滝から川の中を行く区間は不明瞭で、水量によっては困難と思われる。富良野市役所からの事前情報通り2ヶ所の丸木橋は長さ10m・15m、手すりなし(補修未了)。登山口はdocomoが通じ、富良野駅までタクシーで約40分。無事に山行を終えた。

7日間に亘り進捗報告を即時確認いただき、助言と励ましを下さった留守本部のT浦さん、計画に向け準備を進め一緒に歩いてくれたY成さん、ありがとうございました。

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