小仙丈沢~仙丈ケ岳

遡行図のない未知のルート、小仙丈沢。気象条件も今ひとつなところへ、出発直前にアクシデント続出! 急遽5人から3人にチーム編成しての決行判断に驚きつつ、あたふたと再準備して出発です。

北沢峠行きのバスを野呂川出合で降り、林道を歩くこと30分。3歩で入渓できる低い橋からスタート。このところの雨続きで、予想以上に水量があります。

約1時間で標高2000mの幕営予定地に到着。今日の遡行はこれで終え(まだ午前)、焚き火&宴会の予定だったけれど……倒木の多い荒れた沢の様子と予想以上の水量、夜半からの雨予報に気持ちがザワつきます。

「雨の日は沢に入るもんじゃない」とのベテラン棟梁の助言通り、降雨のないうちにできるだけ標高を上げ、翌日は山頂を踏んで帰るという真っ当な道を選択。Y成リーダーの悪魔のささやき「エンドレス宴会~♪」に耳をふさぎ、心を鬼にして遡行再開。

幕営適地から正面に見据えていた第一大滝。「天気が良ければ」は禁句です。黙って巻きます。

第二大滝。リーダーが果敢に巻道を工作するも、結局50mザイルで支流を正面突破することに。

滑るのに加えて残置ピンはユラユラ。そしてキンキンと冷えた雪解け水。トップを行くリーダーの「冷てーっっ!!」の悲鳴に覚悟を決めたものの……まるで滝行した修行僧のよう……。

小雨も降り出し、止まると寒いのでひたすら遡行。背後の谷あいに聳える山が、北岳から鳳凰三山へと移りゆきます。

2600m辺りで傾斜が緩み、沢も浅く細くなり、ダケカンバ・コバイケイソウの穏やかな林に。幕営適地を見つけ、水を汲みタープを張って本日の行程は無事終了。出発から7時間半、17時。ほっとしました。

ダケカンバの枝を中に通した、花畑の中のタープの家。正面には鳳凰三山を望み、客観的にはものすごく素敵な光景のはずが……吐く息は白く、コンロの火もなかなか点かず。ずぶ濡れの着の身着のまま笑顔で酒盛りする男性陣が信じられない! 蛭Tさんが持たせてくれた新品のタープは快適だけど、寒すぎるよー(泣)。

一見平らでも座ってみると結構斜めで、できたての鍋はひっくり返すわ、寝ている間にリーダーの体を半分外に押し出しているわの負の連鎖。でも夜半に強まった雨足に浸水されず寝ていられたので、ナイスな選択とすべきでしょうか!?

翌朝7時すぎ。沢装備はすべて解除し、びしょ濡れの合羽を着こんで出発。2900m辺りからようやく水が切れ、残雪の残る小仙丈沢カールの底に到達しました。高山植物たちがチラホラ咲き始めています。

霧のなか、地図を読みルートを何度か切り替えて、ザレザレの斜面を慎重に進みます。当初予定したよりもやや西、仙丈ケ岳寄りの、藪漕ぎのほぼ無いルートをリーダーが見事開拓。

Y成新道(勝手に命名)分岐にザックをデポし、9時50分、仙丈ヶ岳に登頂しました。

北沢峠のバス発車は偶然にもコースタイムちょうどの3時間後。小雨に濡れたしらびその森と、林床にひっそりと咲くギンリョウソウが素敵な路を下りました。

先の見えない緊張感を物ともしない岩登り・ルーファイ・ビバークの技術と判断力。「キツかったけど楽しかった!」と口を揃えるY成リーダーと棟梁に感服です。一緒に歩いてもらっているうちに、私にも少しずつ、できるようになるのかな。

初日、食料分担の代わりの釣り道具を故意に忘れ、芦安の駐車場からさっさとタクシーに乗り込んでいた山歴50年の棟梁。いま思い返せば、その後に起こることをすべて予見していたのかも!?

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