飛龍山(天平尾根~三条の湯)

天平と書いて「でんでいろ」。この緩やかな尾根を始点から歩いてみたい。で、三条の湯でゆっくりしよう。

登山口の親川バス停に装備と私を下ろし、折り畳み自転車だけ積んだ車は道の駅へ。駐車後バス停までの5㎞をY成さんに戻ってもらい、自転車をデポして9時半前にスタート。

「天平」に行きつくまでは、つづら折りで高度を上げる。800~900m地点の集落跡には立派な家が残っていた。丹波山村は「鬼滅の刃」の舞台。炭焼きや林業を生業にする家族が暮らした家なのだろう。車が普及する以前の、昭和初期くらいまでだろうか。

集落を抜け尾根に乗ると、今日の最高点・サオラ峠までの緩やかな登り。落葉時期の道迷い防止用か、広々としたブナ林に所々ロープが張られていた。

飛龍山の東側斜面をトラバースしながら緩やかに下ること2時間。四度目の沢を渡ると三条の湯に到着。

沢沿いの、千枚田のような段々の小スペースに数張りずつ。木のテーブルが置かれた心地よいテンバ。思えば休憩をとらずに4時間半で着いてしまったけど、14時前で既に10張ほどの先客。ツェルトやULテントが多い。

母屋前で焚かれた釡の鍋には、鹿のスペアリブが。灰汁を除きながらゆっくり焚くと、コンビーフのようにホロホロになるらしい。蓋を開け、「後でご馳走しますよ」と優しいご主人。

何はともあれ、まずお風呂。宿泊・幕営とも満員御礼との話だったが、幸い貸し切りだった。湯上がり後のうたた寝から目が覚めるともう夜で、もう一度温泉に浸かりホクホクで就寝。

翌朝。北天のタルへは、橋は落ちたままワイヤーだけ張られて通行可能となった様子。前日のナマクラを嘲笑うかのように、のっけから300mの急登。

出発から1時間後、カンバ谷源流の手前で断続的な落石音と大声が。前には2パーティ総勢20人。アンザイレン・待機するという有料ガイドツアー7人パーティを越させてもらい、崩落箇所へ。

落石は、その先13人パーティの高巻きによるものらしい。谷をトラバース・直進するはずが何故? 岩にへばり付きながら前半6人の高巻きを見上げている後半7人に追いつき聞くと、この先はルートが崩壊し進めないとのこと。ワイヤーを伝い慎重に数人追い越して先を見ると、ワイヤーは無いけど片足幅分は確保できそうな砂地。ビレイ装備なし・複数人でやみくもに足場の脆い箇所を高巻きする方が、ずっと危険だと思うけど…。

すかさず高巻き中の6人には「戻れ!」、前方の男性陣には「進め!」。女性陣には、直後を歩いて「手と足の場所を決めて慎重に」「上手上手」と、声のトーンの異なるY成氏。安全な場所まで先導し、先を進ませてもらう。

その後も事前情報には無かった崩落箇所が。踏み跡がない。週半ばの大雨で少しずつ崩れたのだろうか。下の画像は通過後に振り返って写したもの。ルート上の凍結が無いのは幸いだった。壁面は凍結し、見事な氷柱。

北天のタル手前で束の間の展望を楽しみ、直登破線ルートで飛龍山頂へ。雲取山よりも高いけれど展望はなく、しっとりとした森の中の静かな頂だった。

飛龍権現を過ぎ、冠雪の南アルプス・富士山を一望し前飛龍へ。急傾斜の岩場を下り熊倉山へ出ると、その先はサオラ峠までの明るく穏やかな路。落ち葉のラッセルが楽しい。

サオラ峠から山王沢までは、500m強のつづら折りの下り。細道に落ち葉が深く降り積もり、気が抜けない。山王沢から下300mは植樹帯に変わり、少しずつ人里へと近づいていく。畑の中の電柵を3回ほど通り抜けて歩道へ。

道の駅に着いて靴を脱ぐと、靴の外側より内側の方が汚くて思わず苦笑。落ち葉のラッセルなんて、子ども時代にも無かったことかも。

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